修羅場が最狂に面白い!韓国版『ラブ・アクチュアリー』?
感想『ジャンルだけロマンス』レビュー
韓国映画『ジャンルだけロマンス』は、スランプに陥った小説家と、彼を取り巻く人間模様を描いた群像劇である。創作の裏側に潜む葛藤や迷いをユーモラスに、時に苦々しく映し出し、笑いと皮肉が同居する大人のヒューマンドラマに仕上がっている。
ヒット作を生み出したものの以降筆が止まり、過去の栄光に縛られている小説家ヒョン(リュ・スンリョン)。そして彼の周囲に集う、弟子や家族、仕事仲間たち。互いの関係が複雑に絡み合う中で、ストーリーは”ロマンス”の形を借りながら、創作と愛憎と裏切りとが入り混じる人間模様を描き出していく。
一人の作家を中心にしながらも、純愛あり、不倫あり、歳の差あり、LGBTQありの多彩な要素が絡み合う群像劇が特徴の本作『ジャンルだけロマンス』。時に激しく、時に切なく人間の有り様をありのままに映し出す。表向きはロマンスでありながらも、その裏にある打算や欲望、裏切りといった人間の醜い部分も描いている。しかしながらコメディとして落とし込むことで無器量になりすぎず、どちらかと言えばそれらはむしろ、ある意味で人間らしさというか、一種の魅力であるようにも見えた。
一見ラブストーリーでありながら、大人の事情や人間関係の修羅場が随所にちりばめられていて、かのイギリス映画『ラブ・アクチュアリー』を思わせる作り。複数のキャラクターが織りなす群像劇として楽しめるだけでなく、現代韓国映画らしいユーモアと毒気が絶妙にブレンドされているのだ。
総じて本作は、人間の慈しみ、怒り、悲しみ、愛といった様々な感情を一本の映画に凝縮したコメディ・ヒューマンドラマである。
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『ジャンルだけロマンス』あらすじ
映画は、師弟関係、恋愛、そして創作の苦悩が複雑に絡み合うさまをユーモラスかつシニカルに描いていく。登場人物たちがそれぞれの立場で「愛」と「創作」に向き合う姿を通して、ロマンス映画でありながら、文学的で大人の苦味を帯びた物語となっている。
『ジャンルだけロマンス』感想|人間関係と群像劇の面白さ
人間関係は複雑ながらも、ストーリーは分かりやすい。主人公ヒョンの物語が軸にあって、その周りを太陽系の惑星のようにその他のキャラクターが巡っているカンジ。それらの物語は互いに干渉しあい、影響しつつストーリーは展開していく。
随所で描かれる修羅場シーンは勢いがあって面白く、観ていて痛快だ。それぞれのキャラクターの個性がひしめき合っていた。表情や言動が若干大げさで、雰囲気を感じ取るというよりは、その一挙手一投足に注目して楽しむというのが視聴者の正しい姿勢だと思われる。心情を共感する部分もままあるが、しかしながらキャラクター同士の言い合いや物理的な衝突を観ているのがやはり面白い。具象的に楽しむのが正解だろう。人間臭さを、笑いながら味わえる。
『ジャンルだけロマンス』という映画タイトル通り、ラブストーリーを期待するのもアリだが、それ以上にヒューマンドラマも含有している本作は、その深みも特徴である。特に近年、社会的に話題になりがちなLGBTQ的な要素は、現代社会に生きる私たちにメチャ当世風な印象を刻みつけてくる。
多彩なキャラクターを精緻に描いている本作は、広くもありそして深くも緻密に描き込んでいる、必見の社会学的映画作品であった。

映像演出とキャスト・キャラクター
ここでは『ジャンルだけロマンス』の映像とキャスト・キャラクターに焦点を当ててみよう。どちらかと言えば心情を感じ取る映画というよりは、動きやセリフで魅せる本作。特にその映像演出やキャラクターの魅力は特筆すべきポイントである。
演出と映像表現
韓国映画『ジャンルだけロマンス』は、群像劇という一見複雑そうな構造をしていながらも、軽快でノリのよい演出で視聴者を飽きさせることはない。シーン毎のテンポは良く、修羅場や衝突の場面ではコメディ的な勢いが協調主張されている。そのため、重々しいテーマを扱いながらも息苦しさは薄まっていて、むしろ爽快な印象を残している。
映像面でもキャラクター同士の距離感を巧く表現しており、近接ショットを多用することで気まずい関係性を映し出す一方で、群像劇らしい複数人を一挙にさらうことでドラマ全体の広がりを演出している。まさに、コメディとヒューマンドラマのバランスが突出した演出であった。
キャストとキャラクター
本作を支えているのは、もちろん魅力的で一癖も二癖もあるキャラクターたちである。主人公のヒョンをはじめとして、弟子や家族、編集者など、立場も年齢や性別までも異なる人物が登場している。純愛、不倫劇、歳の差恋愛、LGBTQといった幅広いファクターを織り交ぜながら、それぞれのキャラクターが印象的に描かれているのがインパクトだ。
特にキャスト人の演技は見どころの一つ!やや誇張された言動を通して、人間臭さを際立たせていた。そのため視聴者は”共感”というよりも、「キャラクターを観察する面白さ」を味わえるのだ。結果的に、群像劇としてのディープさと、コメディとしてのモメンタムの両立をサクセスさせている。
『ジャンルだけロマンス』は群像劇としての魅力を持つ
『ジャンルだけロマンス』は、ひとりの小説家を中心に複数人の登場人物の関係性が絡み合う群像劇である。恋愛や友情、裏切り(浮気)といった人間模様が同時に並行して進行し、登場人物のそれぞれのエピソードが化学式的につながり合っていく。いや、会っていく、とも言うべきか。その構成は、前述の通りイギリスの超有名映画『ラブ・アクチュアリー』に通ずるものがあるが、しかしながら、本作は一味も二味も違う完成を見せているのだ。
ロマンチックだけではなく“苦み”を描いた韓国映画
本作は、ロマンチックなラヴ展開だけにストーリーはとどまらない。小説創作の苦悩、人間関係のしがらみ、皮肉や現実感といった人生の苦みが世代に渡って多岐に混ぜ合わされており、そこに韓国映画らしいウェットに富んだ表現とリアリティが強く表れている。その笑いと苦みが共存している点が、『ジャンルだけロマンス』の大きな特徴である。
映画タイトル『ジャンルだけロマンス』の意味を考える
映画タイトル『ジャンルだけロマンス』には、実にインタレスティングな意味が隠されている。
原題は『PERHAPS LOVE』で、「愛かな?」とか「愛なのかな?」というニュアンスを持っている。それに対して邦題の『ジャンルだけロマンス』は、原題と同じく本作の本質を巧みに表現していた。
本作には、小説家ヒョンとその弟子、ヒョンと元妻、ヒョンと現妻、ヒョンの息子と近所の女性、ヒョンの担当編集者と妻など、もうメチャ複数のラブストーリーが描かれてる。しかしそれらは主人公ヒョンの物語を彩る“絵の具”にすぎず、本質的には恋愛映画ではなく、主人公の人生と葛藤を描くヒューマンドラマなのだ。ラブストーリーが前景化している、『ラブ・アクチュアリー』とはその点では明確に異なる。
つまり、一見するとロマンス映画に見せながらその実、ややこしや人間模様を描くヒューマンドラマだったという“トリック”が仕込んであるのだ。だからこそ邦題は『ジャンルだけロマンス』に落ち着いたと考えられる。たぶん、脚本が完成した後に、考えられたであろう作品の本質を反映させて付けられたタイトルだと私は思う。
考察のまとめ
結局のところ『ジャンルだけロマンス』は、群像劇という、複数のキャラクターに目を向けさせるスタイルを取りつつも、ラブストーリーというフォームを借りたヒューマンドラマであったと私は考える。甘さや温かさ、”LOVE”の艶やかさだけでなく、小説の創作の苦悩や人間の醜さも描き出していて、それをコメディの軽さで包み込んでいる。ラブストーリーが物語を彩る“要素”でとして使われている点において、『ラブ・アクチュアリー』とは一線を画する。
タイトル『ジャンルだけロマンス』は、まさにその本質を表しているものであって、本作が実は恋愛映画ではなく、人生の苦みや人間模様を描いた群像ヒューマンドラマであることを視聴したあとから主張できるようにして付けてあるのだ。
こんな人にオススメ!
韓国映画『ジャンルだけロマンス』は、恋愛映画としてもその趣をもち、また群像劇としても楽しめる作品である。ロマンスに甘さや障害だけを求める人には意外性が強いかもしれないが、様々な人間模様を描くヒューマンドラマを好む方にはぴったりだ。
- 『ラブ・アクチュアリー』のような群像劇が好きな人
- コメディ要素を含んだ韓国映画を楽しみたい人
- 恋愛映画ではなく人間関係のありのままを描いた作品を観たい人
- LGBTQを含む多様な人間模様を描いた映画に関心がある人
- 修羅場や言い争いのシーンをエンタメとして楽しめる人
『ジャンルだけロマンス』レビュー総括
総じて『ジャンルだけロマンス』は、ロマンスという表現を拝借しながら、実際には人間模様と人生の葛藤を描いた群像ヒューマンドラマであった。
登場人物の複雑な関係性や修羅場をコミカルに描くことで、笑いと苦みが同居する独特の魅力を生み出している。
韓国映画の中でもひときわユニークな群像劇であり、恋愛映画としての側面も、人間ドラマとしての本質も、それぞれに味わっても楽しめる一作である。
映画『ジャンルだけロマンス(2023年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:チョ・ウンジ
- 出演:リュ・スンリョン, キム・ヒウォン, ム・ジンソン, オ・ナラ
- 公開年:2023年
- 上映時間:113分
- ジャンル:恋愛, 青春, コメディ, ドラマ