韓国映画のんびり感想レビュー*

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『リトル・フォレスト 春夏秋冬』料理が美味そうな理由|グルメ映画ではなく“生活”の映画

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』は、監督・イム・スルレ、脚本・ファン・ソングにより制作された、2018年2月28日公開(原題:리틀 포레스트)のヒューマン・ドラマ映画。
五十嵐大介の同名漫画を原作とし、恋愛や就職など都会での厳しい生活に疲れ果てた若い女性が、故郷の農村に帰郷して自給自足の生活を送る姿を描く。自ら育てた旬の食材で料理を作り、旧友たちと食卓を囲む四季折々の穏やかな日々を通して、過去の自分と向き合い、人生の新たな一歩を踏み出していく。主人公のヘウォンをキム・テリ、幼なじみのジェハをリュ・ジュンヨル、ウンスクをチン・ギジュ、ヘウォンの母をムン・ソリが演じる。
共演はチョン・グクヒャン、パク・ウォンサン、チョン・ジュンウォンほか。

🌱季節とごはんに癒やされる映画

韓国映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』感想レビュー|料理と音が沁みる癒しの一本

韓国映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(原題:리틀 포레스트)は、都会生活に疲れた女性が故郷の農村へ戻り、四季の中で自分を立て直していくヒューマンドラマである。監督はイム・スルレ。原作は五十嵐大介による日本漫画で、日本版とは異なる韓国社会の現実が背景にある。

主人公ヘウォンを演じるのはキム・テリ。幼なじみ役にリュ・ジュンヨルチン・ギジュが名を連ねる。大きな事件は起きない。畑を耕し、旬の食材を調理し、静かに季節を受け入れる。その淡々とした日常の積み重ねこそが、本作最大の魅力である。

 

ストーリー進捗の半分で決めた。これは★5だ。ずっとこの空気に浸っていたい。そんな映画だった。

韓国オリジナルだと思っていたら、日本の漫画が原作。日本では2014年〜2015年に二部作として『リトル・フォレスト 夏・秋』 『リトル・フォレスト 冬・春』で実写化されたらしい。

日本版も韓国版も、どちらもレビューが★4以上と評価が高い。派手ではないが、淡々と移ろう季節に身を任せる。非常に心地が良い映画だった。

癒し映画、料理映画、スローライフ映画を探している人には確実に刺さる一本である。

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癒し映画としての完成度 ― 季節を味わうスローライフ作品

韓国映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』は、まさに憧れる田舎暮らしやスローライフを描く癒し映画というヤツだろう。現実の農村生活は決して甘くはないはずだが、本作が映し出す自然の潔さ、澄んだ空気、静かな光景には、それだけで涙が溢れそうになる。

本作は派手ではないし、何か大きな事件が起こる映画ではない。淡々と日々を描く。私が知っている映画で例えるなら、『PERFECT DAYS』『日日是好日』と同じような系統である。これらの映画が刺さった人ならマジで刺さるだろう。

しかしそれらとは大きな違いもある。『PERFECT DAYS』が“日々の反復”を描き、『日日是好日』が“年月の蓄積”を映していたのに対し、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』は“季節の循環”を軸にしている。春夏秋冬の移ろいを体感させる構造が、この映画の核である。

その風景が、非常に美しい。
 

この空気感は、アニメ『のんのんびより』に通づるものがる。ャグ寄りではあるが、田舎の季節描写や静かな時間の流れに共通点がある。スローライフ作品としての質感が似ているのだ。


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上映時間は103分。コンパクトでテンポは良いが、せかされる感覚はない。むしろ穏やかに沈んでいくタイプのリズムである。この沈着した雰囲気、しんみりする感情に浸っていたいと思う私には非常に物足りなく感じてしまった。しかしその完全に満たされない感情もまた、この映画の余韻である。

明確な起承転結やカタルシスを求める人には、本作は合わないかもしれない。しかし、癒し映画を探している人、田舎暮らしや自然描写に惹かれる人、答えを押し付けられない映画を好む人には適した一本だろう。

 

料理シーンと音が凄い ― “食”で魅せる癒し映画

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』を語るうえで外せないのが、その圧倒的に美味そうな料理シーンだろう。本作は帰郷ストーリーとスローライフを描く作品である。それなのに、いちいちメシが美味そうなのだ。

本作は決してグルメ映画ではない。それでも観ていると確実に腹が減る。主人公ヘウォン(キム・テリ)が作る料理は、単なる生活描写にとどまらない。小豆の湯気、包丁で刻むトントントンのリズム、噛んだときの質感。映像は過剰な説明をせず、それでいて観る者の空腹中枢を正確に刺激する構図と音響設計になっている。

特筆すべきは“音”である。包丁がまな板に当たる乾いた音、芋を潰す鈍い圧、餅やパンを丸める湿度、油に落とした瞬間の細かなジュワッとした泡立ち、そしてサクッと咀嚼音。どれも誇張せず、生々しい。BGMで感情を煽るのではなく、環境音と調理音を自然に浮かせることで、料理のシズル感が際立つ。結果として観客は料理を「見る」のではなく、「体感する」感覚に近づく。

重要なのは、料理が“映え”のために存在していない点である。畑で採れた食材を手間をかけて調理する。そのプロセス自体が、ヘウォンの心の回復とリンクしている。だからこそ料理に生活の温度が宿り、自然と美味そうに見える。

しかし間違ってはいけないのは、料理が主役なのではない。本作はあくまで生活を描く映画である。日常を丁寧に映すからこそ、結果的に料理シーンも丁寧になるのだ。わざとにクッキングを際立てせているわけではない。この距離感が、いわゆるグルメ映画とは一線を画すポイントなのである。

観終わる頃には、深夜に冷蔵庫を開けたくなる。そんな“腹が減る癒し映画”だ。



.”料理”がメインのグルメ映画レビューはコチラ.

www.ikakimchi.biz

 

母親はなぜ出て行ったのか? ― 玉ねぎの比喩とラストの意味

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』で、物語の中核ではないが気になるのが、「へウォンの母親はなぜ出て行ったのか?」という点である。いわゆる”母の失踪理由”は作中では明示されない。原作でも語られていないようだ。しかし、完全な蒸発とも描かれない。

ヘウォン宛ての手紙から読み取れるのは、母が自分の意志で家を出たという事実である。田舎暮らしに疲れて、追い詰められて逃げたというより、「自分の人生を選んだ」というニュアンスが強かった。さらにラストシーンでは、母親の帰郷をほのめかす描写がある。加えて、伯母と連絡を取れる状態にあることも示唆される。つまり、完全な断絶ではない。

本作は、「去ること」を否定しない映画だ。ヘウォン(キム・テリ)もまた大学生活から住んでいたソウルを離れ、帰郷し、そしてまた都会へ戻り、最終的に春に再び故郷へ帰る。母と娘の対立構造ではなく、同じ環境の軸上にいるのだ。

その象徴となるのが玉ねぎのエピソードである。芽が出た玉ねぎは一度土から抜き、冬の間に寝かせる。そうすることで、春に植えたものより硬く、甘くなる。
「一度抜く」「再び植える」「冬を越す」「甘くなる」――このプロセスはヘウォンの人生そのものである。

母もまた、“抜かれた玉ねぎ”だったのではないか。家を出て行って何をしていたのかは語られない。しかし、娘の大学進学という節目に合わせ、自分も新しい人生を選んだ可能性は高い。去ることは放棄ではなく、成熟の時間だったという解釈が私の中で成立した。

重要なのは、本作が母を断罪しない点である。出ていくことも、戻ることも、成長の一形態として描く。だからこそこの映画は母の失踪を描いた物語ではなく、季節の循環と再生を描いた物語なのである。

 

こんな人にオススメ!

  • 派手な展開よりも、静かな日常を描く癒し映画が好きな人
  • 料理シーンや生活音に没入できる作品を探している人
  • 「定住か挑戦か」といった二択ではなく、自分のペースで生き方を選びたいと思っている人

本作は、成功や達成を提示する映画ではない。春夏秋冬を一周し、そのうえで「今はここにいる」と選び直す物語である。だからこそ、答えを与えてほしい人よりも、自分の中で答えを見つけたい人に向いている。

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まとめ ― 季節のように、選び直せばいい

『リトル・フォレスト 春夏秋冬』が描いたのは、定住でも逃避でもない。「今はここを選ぶ」という姿勢である。

ヘウォンは一度抜かれた玉ねぎのように、冬を越え、春に戻る。母もまた同じ循環の中にいる可能性が示唆される。去ることも、戻ることも、否定されない。

人生は直線ではなく、季節のように巡る。うまくいかない時期があったとしても、一度離れてみていいのだ。そしてまた、甘くなって戻ればいい。本作が残す余韻は、その静かな肯定である。

 

映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬(2018年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:イム・スルレ
  • 出演:キム・テリ, リュ・ジュンヨル, チン・ギジュ, ムン・ソリ
  • 公開年:2018年
  • 上映時間:103分
  • ジャンル:ドラマ

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