家族の絆や故郷への思いを温かく描いた家族映画である。
釜山で船「おんぶ号」を営むジョンボムは、一人息子を育てながら懸命に暮らしていた。弟の突然の結婚話や息子の成長など、さまざまな問題に直面する中、大切な船を守るため奮闘していく。
ジョンボムをチョン・ジュノ、弟ジョンフンをチェ・デチョルが演じる。共演はイ・エルビンほか。

韓国映画『おんぶ』は、釜山の海を舞台に、家族の絆と人生の重みを温かく描いたヒューマンドラマである。主人公ジョンボムを演じるのは、韓国ドラマや映画で活躍する チョン・ジュノ。男手ひとつで息子を育てながら、愛する家族と大切な船を守ろうと奮闘する父親の姿を情感豊かに演じている。
共演には チェ・デチョル を迎え、対照的な性格を持つ弟との関係性も物語の見どころのひとつだ。派手な展開ではなく、人と人とのつながりや家族への思いを丁寧に積み重ねていく本作は、どこか懐かしく優しい余韻を残してくれる作品となっている。
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人物描写が浅く、感情移入しづらい
もちろん比べるものではないのだが、それでも韓国映画は総じて日本映画よりレベルが高いと個人的には思っている。そうは言っても、本作『おんぶ』を観る直前に日本映画『国宝』を観ていた。韓国映画といえど、そんじょそこらの作品では分が悪い相手だ。何しろ日本最高峰の実写映画である。いや、そもそも勝負ではないのだが、視聴直後となるとどうしても比べてしまう。そして『おんぶ』は、そんじょそこらの作品だった。
本作には、母親を事故で亡くした男の子ノマ、貧しいながら息子を育てる父親ジョンボム、結婚詐欺に遭いそうになっている叔父ジョンフンなど、ドラマになりそうな設定が数多く用意されている。しかしそれらは提示されるだけで、十分に掘り下げられない。
まるで登場人物の設定を、そのまま映画に移しただけ。なぜ貧しいのかの説明はないし、貧しいくせに居酒屋で肉食って飲んだくれている。節約して借金返せよ、という話だ。ノマをかばって死んだ母親の設定は活かされることなく、「僕のせいで……」と葛藤するような場面もない。結婚詐欺もチンピラみたいな黒幕をジョンボムがやっつけて解決、というなんとも薄い内容。なぜジョンボムが喧嘩強いのかも不明だ。
人物の背景が物語や感情の動きに結びついておらず、登場人物の内面が見えてこない。設定が先に来てしまっていて、物語がそれを追いかけていない。そのため感情移入しづらい作品になってしまっている。
具体的に気になったのが、ノマと転校生の女の子イスルのシーン。イスルの父親が病気で亡くなり、彼女はまた転校することになる。別れ際にイスルは「ノマのことは忘れない」みたいなことを言うのだが、「いや、そんなに親しい関係性を構築してたっけ?」というのが率直な疑問だった。
ノマが彼女のためにしたことと言えば、しゃっくりの止め方を教えたこと、亡き父を悲しむイスルにハンカチを渡して慰めたこと、その程度だ。「それならアリじゃない?」と思うかもしれないが、ノマは実は大失態を犯している。強引にデートに誘う男子と嫌がるイスルというシチュエーションで、彼女が見ている前で敵前逃亡をかましているのだ。
流石にそれは体が悪い。しゃっくりとハンカチだけでは挽回できないのではないか。しかも別れ際にはかなり親密な関係になっているのだが、「いつそんなに仲良くなったん? そんな描写なかったやん」と思わせる。つまり物語で関係性を描くのではなく、設定が先に来てしまっているのだ。なんとも腑に落ちない事の運びだった。
視聴後に★3をつけたが、★2でも良かった気がする。というか、気がしてきた。
意味を感じられないシーンが目立つ
韓国映画『おんぶ』では、意味のないシーンが散見される。後の展開につながりそうな描写がいくつか登場するのだが、それらが特に回収されることはなく、物語上の役割も見えてこない。
例えば物語序盤、転校してきたイスルに対してクラスのリーダー格の女子児童が敵意を向ける場面がある。「ノマは私のものよ!仲良くしないで!彼と喋っちゃダメ!」などと因縁をつけるが、後に「忠告したわよね!」とか言い出したり、いじめに発展したりはしない。イスルもイスルで普通にノマと会話する。「あなたと話しちゃダメだって言われた」「それはひどいね!」みたいなやりとりもない。あのシーンは何のためにあったのか。
また、ノマの母親がノマをかばって死ぬシーン。父親のジョンボムは「ノマには本当のことは隠してくれ。せめて大人になるまでは!」とか言うが、それが物語に影響することはない。前の見出しでも触れたように「僕のせいで母さんは……!」みたいなことはないし、「父さんは僕を騙してたんだ!」なんてこともない。何のためのやりとりか。謎である。印象的な場面を置いただけで終わっていて、脚本全体のまとまりを弱めていた。
意味があるようで意味がない。ぺらんぺらんの薄っぺらんである。
一方で印象に残ったシーンもある。不良少年からイスルを守るため、これまで逃げてばかりだったノマが初めて立ち向かう場面だ。喧嘩に勝利した後、ノマは涙を流す。イスルが「泣かないで」と声をかけると、ノマは「痛くて泣いているんじゃない。誇らしくて泣いているんだ。今まで逃げてばかりだったから」と答える。ノマのそれまでの弱さと成長がきちんと結びついており、本作の中で最も心を動かされたシーンだった。ただ、こうした場面は少なく、全体としては脚本の粗さと人物描写の薄さが目立つ。設定だけを並べて物語を組み立てたような安っぽさが、最後まで拭えなかった。
脚本全体に安っぽさを感じた
結局、本タイトルの『おんぶ』とはなんだったのか。
普通、タイトルは作品の核を表す。『国宝』なら「国宝とは何か」が作品全体に関わっている。『おんぶ』も、その行為が象徴的に何度も登場したり、親子関係や成長のテーマと強く結びついているなら納得できる。しかし観終わった私が真っ先に「っていうかなんで『おんぶ』?」となっているのだから、タイトルと作品テーマの結び付きが弱い。というか弱い。
制作側はおそらく、父親が子を背負う、誰かが誰かを支える、家族の絆、みたいな意味を込めたのだと思う。ただ、それが映画全体を通して十分伝わらなかったから、タイトルだけが浮いて見えるのだ。
実際、作中に印象的な「おんぶ」の場面がないわけではない。マッコリを飲んでしまった子どもたちが寝てしまって親たちがおんぶするシーン、船の名前を「おんぶ丸」にするシーンがある。ただ、なぜ船に「おんぶ」と付けたのかの理由は語られない。一応、ノマがおんぶが好きだからということらしいが、船におんぶって……。無理くり過ぎないか。
もちろん映画には説明しない美学もある。しかしその場合でも、観た人が「ああ、だからおんぶなのか」と自然に腑に落ちる必要がある。父親が息子を背負う、息子が父親を精神的に支える、誰かが誰かを支えて生きている、そういうテーマが一貫して描かれていれば、説明がなくてもタイトルは成立する。
たしかに作中の親たちは子を物理的にも精神的にも背負っているし、ジョンボムは弟さえも気遣っている。しかしそれは本作に限ったことではない。大抵のヒューマンドラマは誰かが誰かを支えている。映画『おんぶ』だからこその意味が、私には感じ取れなかった。他のヒューマンドラマと違うところが「船の名前をおんぶ丸にしました」くらいなのだとしたら、タイトルの意味を観客に委ねているのではなく、単に描写が足りていないように見える。
そしてこれも、私がずっと指摘している問題と同じだ。転校生との関係が描けていない、母親を亡くした設定が活きていない、嫉妬する女子の役割がない、船がおんぶ丸になった理由が強引。全部「こういう設定があります」で止まっている。「初期設定資料を塗りつなぎ合わせたみたいな映画」だ。我ながら言い得て妙だと思う。
設定そのものは存在する。しかしなぜそれがあるのか、それが人物や物語にどう作用するのかが描かれていない。だから観客が自分で補完する範囲を超えて、「説明不足」に見えてしまう。タイトルにまでなっている『おんぶ』とは何だったのか。視聴後に最も強く残ったのは、その疑問だった。
こんな人におすすめ!
辛口になるが、正直に書く。
- 韓国映画を観まくっていて、多少の出来の悪さは気にならない人
- 子どもの成長を描いた作品なら何でもいい人
- 約100分、休日に何も考えずだらっと流したい人
- ひとまず家族映画なら何でも良い人
「いい話にしたい」という魂胆が透けて見える
ここまで散々書いてきたが、実はまだ言いたいことがある。一つ一つ説明するのも疲れてきたので手短に済ませるが、ご都合主義が目立つのだ。
例えば、専務が逮捕されたことでジョンボムの借金が帳消しになる展開。そもそもその借金は船を買ったローンであり、専務との個人的な契約ではなく会社との契約だ。専務が捕まったところでローンが消えるわけがない。「とりあえずハッピーエンドで終わらせよう」という魂胆が見え隠れする。否、隠れてもいないし、隠そうともしていない。
極めつけは成長したノマのギャップだ。とにかく"いい話に持っていきたい"らしい。
結局この映画、意図は分かる。伝えたいことも、やりたいことも、なんとなく分かる。ただそれが全部「なんとなく」で止まっている。設定は並んでいる、場面も揃っている、でも何も刺さらない。初期設定資料を塗りつなぎ合わせたまま完成させてしまった、そういう映画だ。
★2に訂正しようかと思ったが、ノマが初めて立ち向かうシーンだけは良かった。その一点だけ残して、★3のままにしておく。いや、やっぱり★2かもしれない。
映画『おんぶ(2022年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:チェ・ジョンハク
- 出演:チョン・ジュノ, チェ・デチョル
- 公開年:2022年
- 上映時間:106分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
