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韓国映画『藁にもすがる獣たち』感想・レビュー|伏線回収にゾワッとした理由

『藁にもすがる獣たち』は、2020年公開の韓国のクライムサスペンス映画。監督・脚本はキム・ヨンフン。
曽根圭介の同名小説を原作に、大金の入ったバッグを巡る人々の欲望と運命が交錯する群像劇である。
サウナで働く男、中年の税関職員、危険な夫から逃れようとする女性など、それぞれ事情を抱えた人々の前に大金の入ったバッグが現れる。思惑が絡み合う中、彼らは予想もしない事態へと巻き込まれていく。
チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウが出演する。共演はユン・ヨジョン、チョン・マンシク、チン・ギョンほか。

韓国映画『藁にもすがる獣たち』イメージイラスト競争する泳ぎとお金の追跡


韓国映画『藁にもすがる獣たち』を観終えた直後、私は思わず鳥肌が立った。衝撃的な結末に驚いたからではない。エンドロールが流れ始めた瞬間、序盤に何気なく映っていたはずの場面が、次々と頭の中でつながり始めたからだ。

本作は、サウナのロッカーで見つかった大金を巡って、複数の人間の欲望が連鎖していく韓国ノワールである。チョン・ドヨン演じるヨンヒを中心に、チョン・ウソンペ・ソンウら登場人物たちの思惑と裏切りが複雑に絡み合い、誰が獲物で誰が捕食者なのか分からなくなっていく。

ただ、私がこの記事で伝えたいのは「あらすじが面白かった」ということだけではない。本作は、序盤にちりばめられた断片が、ラストで説明されるのではなく自分の頭の中で勝手に整理され始めるという、独特の体験をもたらしてくる映画だった。

本記事では、『藁にもすがる獣たち』のあらすじや結末に触れながら、観終わった瞬間に「もう一度観たい」と思わせるその仕掛けと、実力派俳優たちの演技の魅力について書いていく。

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『藁にもすがる獣たち』感想|鳥肌の理由はラストの衝撃ではなく「伏線回収」だった

韓国映画『藁にもすがる獣たち』を観終えた直後、思わず鳥肌が立った。

衝撃的な結末だったからではない。残酷な描写に圧倒されたからでもない。エンドロールが流れ始めた瞬間、劇中で見たはずの場面が次々と頭の中を駆け巡っていた。それだけのことで、あんなに鳥肌が立ったのだ。マジで、ぞわわっとした。

序盤にちりばめられた伏線の数々

本作の序盤は時系列が前後する構成になっている。

  • 女性が空港のトイレを掃除しているシーン
  • テレビから流れていたニュース
  • 銭湯に置かれた行方不明者のチラシ
  • ロッカーに押し込まれる大金入りのバッグ
  • 各章の始まりで映る謎のモチーフ

これらは観ている最中、確かに目に入っている。そして、全てが伏線である。

始まりにパーツをばら撒いておくパティーン。

しかしその時点ではただの情報として通り過ぎていくだけだ。なぜあの掃除シーンがあるのか。なぜニュースが流れるのか。なぜチラシが映るのか――理解しているつもりでいるのだが、実際には情報を保留させられているだけだったんだと思う。

ラストで一気につながる伏線回収の快感

ところがラストを迎えた瞬間、それらの断片が一気につながり始める。

「あのニュースはそういう意味だったのか」「あのチラシは単なる背景じゃなかったのか」「だからあの人物はあの行動を取ったのか」――映画が答えを説明するのではなく、自分の頭の中で勝手に整理が始まるのだ。

一般的な伏線回収映画と何が違うのか

私は伏線回収の巧い作品が好きだ。でも『藁にもすがる獣たち』で感じた快感は、一般的なそれとはちょっと違っていた。

多くの作品は最後に種明かしをして観客を驚かせる。「あの犯人はこいつだったのか」で終わるパターンだ。しかし本作はラストで新しい情報を出すわけじゃない。必要な情報はすでに開示されている。それでも私は最終的に誰がカネを手にするのか、予測できなかった。

鳥肌の正体は「映画」ではなく「自分の脳」だった

つまり私が鳥肌を立てたのは、「映画に回収された」のではなく、「自分の脳が回収を始めた」瞬間だったのだ。

見えていたはずなのに見えていなかった。理解していたつもりだったのに理解できていなかった。このアハ体験。何とも心地よかった。

この衝撃は脚本の巧みさだけでは生まれないと思う。チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウら実力派俳優たちの演技があり、観客へ余計な説明をしない演出があり、断片を絶妙な順番で配置する編集がある。どれか一つでも欠けていたら、あの鳥肌は生まれなかっただろう。だからこそ映画を観終わった私は、満足感より先に「もう一度最初から観たい」と思ったのだった。

 

『藁にもすがる獣たち』感想|一度観終わってから始まる映画だった

「映画が終わった後に完成する映画」と書くと大げさに聞こえるかもしれないが、私にとってはそれが一番近い表現だった。

序盤は「分かった気になっている」だけだった

本作は複数の人物の視点が入り乱れ、時系列も前後する。サウナで働く男、借金を抱えた男、危険な関係に足を踏み入れる女。さらに大金の入ったバッグまで登場し、序盤から情報量は多い。

しかし観ている最中は、それらがどう繋がるのか分からない。いや、正確に言えば分かった気になっている。物語を追えているつもりでいるのだ。ところがラストに到達した瞬間、その認識が覆される。自分はストーリーを理解していたのではない。ただ断片を眺めていただけだったのだと気付かされる。

二度目を観たくなる理由は「面白かったから」じゃない

だから本作は二度目が観たくなる。それも単なる「面白かったからもう一回」という話ではない。

一度目と二度目で、まったく違う映画になる予感がするのだ。序盤の何気ない会話。テレビから流れるニュース。人物たちの視線。背景の情報。初見では見逃していたものが、二度目にはまったく別の意味を持って見えてくるはずだ。

どんでん返し目的の作品とは根本的に違う

近年のサスペンスには、どんでん返しそのものを目的にした作品が少なくない。しかし本作は驚かせることだけに終始していない。結末を知った後でも成立するどころか、むしろ結末を知ってから本領を発揮する。

多くのサスペンスは真相が分かった瞬間に終わる。しかし『藁にもすがる獣たち』は逆で、「終わった瞬間に始まる」という感覚がある。

「韓国映画が好きだから持ち上げている」のではない。「映画としての完成度に圧倒された」のだ。観終わった瞬間に「もう一度観たい」と思わせる作品は意外と少ない。私の感想の核は「伏線回収に驚いた映画」ではなく、「観終わった瞬間にもう一度観たくなった映画」である。むしろ「金に翻弄される人間たちの群像劇」という一般的な感想より、「映画が終わったあと、自分の脳内で勝手に第二上映が始まった」という感覚のほうが近い。

『藁にもすがる獣たち』は、上映時間中に完成する映画ではなく、観終わったあとに完成する映画だったのだ。

 

『藁にもすがる獣たち』日本版予告と韓国版を比較|改めて感じた韓国版の凄さ

私は韓国映画『藁にもすがる獣たち』を観終わった後、日本版リメイクの予告編も観てみたのだ。いや、リメイクって呼べるのかどうか。何しろ原作は日本だし。本レビュー執筆中にはまだ日本版は公開されていないが、テザーを観てみた。



正直な感想を言うと、早々に不安になった。もちろん予告編だけで作品の良し悪しを決めることはできない。しかし、それでも感じてしまった。「あれ、何か違う」と。

ストーリーは同じはずなのに、印象がまったく違う

ストーリーは同じかもしれない。登場人物の配置も似ているかもしれない。それなのに、受ける印象がまったく違っていた。

日本版予告を観た瞬間に浮かんだのは、「これ同じ話なん?」という驚きではなく、「同じ材料なのに料理人が違う」という感覚に近かった。つまり「ストーリーが同じでも成立しない作品がある」ということだ。

演技・演出に宿る韓国版の魅力

改めて韓国版を振り返ると、本作の魅力は脚本だけではない。チョン・ドヨンの圧倒的な存在感。チョン・ウソンの疲れ切った表情。ペ・ソンウが醸し出す生活感。彼らは演技をしているというより、その人物としてそこに存在しているように見える。

さらに映像や編集もそうだ。韓国版には独特の緊張感がある。派手な演出で盛り上げるのではなく、静かに空気を積み上げていく。だからこそ後半の展開が生きてくる。

予告を観た限りでは、日本版は感情を前面に押し出しているように見えた。というか、作りがちゃちいというか、薄っぺらい? 「あー、うんうんよくある典型的な日本映画だなぁ」っていう雰囲気。「これはアレなヤツだ」の匂い。 ”#わらけも”じゃねぇよ……。べつに貶めたいわけではない。しかし伝わってくるどうしても拭えないモノ。あれだ。『果てしなきスカーレット』の予告編を観た時みたいな、面白くなさそう感。

言い訳に聞こえるかもしれないが、比較しているわけじゃない。単純な、予告編を観た感想だ。ただそう感じただけのことである。しかしながら、「ああ、うん」ってなっちゃうよねって話で。語彙力よ。

もちろん完成品を観れば評価は変わるかもしれない。そもそも、原作は日本製なのである。だが少なくとも私は、韓国版が持っていたあの独特の空気感を簡単に再現できるとは思えなかった。

「映画を観ていたつもりが、実は映画に操られていた」

私の感想は「ストーリーが面白かった」「伏線回収が凄かった」では終わっていない。むしろラストで鳥肌が立ったあと、「こんな細かいところまで計算されていたのか」と気付かされた、という感覚のほうが近い。

繰り返しになるが、私は視聴中、ニュースを見ていた、チラシを見ていた、バッグを見ていた、登場人物を見ていた――そのつもりだった。しかしラストで振り返ると、「本当に見ていたようで何も見えていなかった」のだ。だからレビューの核は、「映画を観ていたつもりが、実は映画に操られていた」かもしれない。

そしてそこには、脚本だけではなく、チョン・ドヨンの存在感、チョン・ウソンの説得力、ペ・ソンウの生活感、カットの積み重ね、時系列の崩し方――全部が関わっている。脚本、演技、演出、編集。それらが奇跡的なバランスで噛み合った結果として、この映画は生まれているのだ。

だから私が問いたいのは、「誰が生き残ったか」「誰がカネを手にしたのか」ではなく、「なぜラストで脳が勝手に最初から映画を再生し始めたのか」なのである。日本版の予告を観て覚えた違和感は、裏を返せば韓国版の完成度の高さを再認識した瞬間でもあったのかもしれない。

 

『藁にもすがる獣たち』はこんな人におすすめ

ここまで語ってきたが、正直「全人類観ろ」とまでは言わない。さすがにそこまでの図々しさを私は持ち合わせていない。でも、こういう人にはマジで刺さると思う。

  • 伏線回収で「鳥肌が立つ」体験をしたい人
  • どんでん返しよりも「じわじわ来る」サスペンスが好きな人
  • チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウの演技をじっくり観たい人
  • 一度観ただけで満足せず、二度目で答え合わせをしたい人
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まとめ|『藁にもすがる獣たち』は観終わってからが本番

長々と語ってきたけれど、結局言いたいことは一つだけだ。この映画、観終わった瞬間に「もう一回観たい」って思わせてくる。それだけで十分すごいことだと思う。

ラストの衝撃でゾワッとする映画は他にもある。でも「自分の脳が勝手に伏線を回収し始める」感覚を味わわせてくる映画は、そう多くない。少なくとも私はしばらく出会っていなかった。

日本版の予告にちょっと不安を覚えたのも、結局は韓国版への信頼の裏返しだったんだと思う。だからこそ、まだ観ていない人には強く言いたい。「藁にもすがる」前に、まずこの映画にすがってみてほしい。

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映画『藁にもすがる獣たち(2020年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:キム・ヨンフン
  • 出演: チョン・ドヨン, チョン・ウソン, ペ・ソンウ, ユン・ヨジョン
  • 公開年:2020年
  • 上映時間:148分
  • ジャンル:サスペンス, クライム
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